HOME コールセンターコラム vol.12【ハードクレームについて考える 第1回】By竹内 豊

vol.12【ハードクレームについて考える 第1回】By竹内 豊

皆さま、こんにちは。竹内豊と申します。
今回から3回にわたり、「ハードクレーム」への応対ついて、皆さまとご一緒に考える場を持たせていただきます。

1.ケーススタディ

各社コールセンターはもちろんのこと多くの接客の現場で、クレームはお客さまからいただくチャンスです不満をきちんと表明してくださるお客さまはありがたいと考えましょうと言われることがよくあります。これは真実なので、意味を理解した上で一つひとつのクレームに感謝の心で向き合えればそれにこしたことはないのですが・・・・・・お客さま応対の最前線にいる人のホンネとしては、やっぱりクレーム応対って「大変なもの」ですよね。「嫌なもの」と感じる方も少なくないと思います。「クレーム応対、好きです!」と言えるのは、もしかしたら変わった人かもしれません(ちなみに私はその変人の一人です!)
この連載ではハードクレーム応対の中でも特に、①⇒お客さまのお怒りが非常に烈しい ②⇒激昂してしまっている ③⇒応対になかなか納得いただけず、執拗なまでにお話しを続けられてしまうといったケースを扱います。クレーム応対に必要なスキルの中でも特に重要なものをピックアップして取り上げ、皆さま一人ひとり、そしてセンター組織全体の応対力アップの一助となることを、大切なねらいとしています。後ろ向きになりがちなクレーム応対に、少しでも前向きに臨めるようになり、プロの応対者としての自信を深めていただけるならば、嬉しく思います。第1回の今回はケーススタディを用意しました。ケーススタディを通し、応対のどこに問題があるのかをご一緒に考えてみましょう。

☆⇒「企業情報」「設定」「応対書き起こし」を確認してください。
※「応対書き起こし」については、声に出して読んでみることをお勧めいたします。

☆⇒「考察のポイント」を確認し、皆さまそれぞれのお考えを整理してみてください。

■ 企業情報 (下記情報は全て架空です)

企業名 SPPバーガー
所在地 大阪府大阪市中央区南船場1-12-11 関西ユビキタス5F
業種 飲食業。ハンバーガーショップのチェーン展開を行なっている          全国に140店舗
問合せ先 SPPバーガーお客さま相談室TEL:0120-000-001                    受付時間:9:00~19:00(月~金/年末年始を除く)

■ 設定

受付日時 2018年7月10日(火)11:00
問合せの主旨受電経緯 先日、東京都内の店舗「浜松町店」でハンバーガーのセットを注文し、店内で食べたところ、ハンバーガーの温度が低いように感じた。過去、チェーンの他店舗でも同じメニューを注文したことが何度かあったが、このように低い温度ではなかった。店員に苦情を言ったところ、商品を交換してくれた。だが、交換後のハンバーガーもやはり温度が低い(ぬるい)ように感じた。店員に、「なぜ2度もぬるい商品を出すのか」について苦情を言ったところ、それに対する答え方が冷淡・事務的で、非常に腹が立った。本社に直接クレームを言いたいと思い、インターネットでお客さま相談室の電話番号を調べ、電話した。
お客様 鈴木様/男性
応対者 天満太郎(てんまたろう)/男性

■ 応対書き起こし

お客様(鈴木様) 応対者(天満太郎)
  お電話ありがとうございます。SPPバーガー天満でございます。
すいません  
  はい
電話したんですけど  
  はい
あのさ。こないだ、お宅の店舗でハンバーガー頼んだんですけど、  
  はい
それがちょっとね、ちゃんとした温度じゃないっていうか、  
  はい
ぬるかったんですよ  
  はい・・・
だから「はい」じゃなくてさ!  
  はい、申し訳ございませんでした・・・
がっかりしたんですけど、はっきり言って。  
  はい、あの、本当に申し訳ございません。商品の温度につきましてはきちんと管理するようにいたしますので。あの、恐れ入りますが、どちらの店舗をご利用でしたでしょうか?
温度管理ちゃんとするようにっていうのは、店舗でも言いましたよ、店員さんに!  
  あ、さようでございましたか
そしたら、「温度チェックは毎日決まった時間にやってて、今日も特に問題は出てない」って言われたんですね。  
  そうでしたか
おかしいよね、こういうの!  
  はい、あの
こっちはさ、自分で食べてぬるいって感じたから、それをそのまま伝えてんのにさ、「問題ありません」って言うのはね。問題ないんじゃないんだよ!問題あるんだよ!  
  あ、お客さまとしましてはハンバーガーの温度がぬるいのがご不満であったということですね?
そうです!こっちだって、もしお宅の設備とか機械にもし異常が発生してるんだったら、言ってあげたほうが親切かなと思って、言ったわけなんですよ。  
  申し訳ございませんでした。本社からもですね、キッチンの状態に異常がないかどうか至急店舗に確認させたいと思いますので、あの、商品がぬるかったというのは、本日でしょうか?
昨日です  
  はい、昨日、何店をご利用されましたでしょうか?
浜松町店です。  
  東京の浜松町店でお間違いなかったですか?
そうだってば!ていうかさ、お宅のさ、モノの言い方っていうか聞き方っていうか、その喋り方さ。変だと思うんだけど、ほんとに本社の人?  
  はい、あの、こちらは本社のお客さま相談室でございますが
あなた、なにさんでしたっけ?名前。  
  私は天満と申します。
天満さん。悪いんだけどさ、そこのもっと偉い人っていうか、上司の人出してもらえます?  
  あ、申し訳ございません。あのー、それは、ハンバーガーの温度がぬるかったことがご不満だったからということでしょうか?
それはもちろんそうだけど、ちょっとこっちも、他に喋りたいこともあるんだけど正直言ってちょっと天満さんだと頼りないんだけど!  
  あ、あのですね、申し訳ございません。私がまずお話しのほう伺わせていただきたいと思っておりますので
じゃあそれでもいいけどさ  
  はい。あの、浜松町店にはですね、この後ですぐに連絡を取りまして、温度の件、申し伝えますので。昨日はせっかくお越しいただいたのにご不快な思いをさせてしまいまして、申し訳ございませんでした。
いや、あのね、不快は不快なんだけど、ハンバーガーを作る設備に異常があるんじゃないかと思ったのは、他の店舗でもおんなじ商品注文したこと何回かあるんだけど、そん時は普通に熱かったんですよ。持った時に、「お、熱いな」って感じるくらいに。  
  あ、そうでしたか
だからおかしいと思って、昨日浜松町店の店員さんに言ったら、逆にこう言われたんですよ。「全店舗で同じ設備、同じ材料、同じ調理方法で作っているので、店舗によって温度が違うということは考えられない」って言われたんですね。  
  あ、そうでしたか・・・
だからマジでふざけんなって話しだよね!こっちだってわざわざこんなくだらないことで嘘つくわけないじゃん!現に他の店で食ったやつとは明らかに温度違っててさ浜松町店のは冷たかったからさ、それを伝えてんのに「考えられない」って。マジでびっくりしたんだけど、その答え方。  
  あ、あの、確かにですね。あのー、状況のほうはもう一度確認しないと分からないんですけれども、全国の店舗で全て同じ設備で、同じ調理方法で商品のほう提供しておりまして、店舗によってクオリティが変わるということは基本的にないようにおりまして
いや、だから違ってたんだって、温度が!  
  はい、あのそちらについての原因のほうはですね、ちょっと調べてみないことにはお答えできないものですから・・。あのー、浜松町店の店員は、商品の交換はさせていただきましたでしょうか?
してくれましたけど、交換してくれたやつもやっぱりぬるかったから、それで苦情言ったんだよ、こっちも。  
  交換はしたということですね?
はい  
  かしこまりました。あのー、今いただいたお話しをもとに、商品の温度管理とですね、それから店舗スタッフの対応にもご不快をもたらしてしまう点があったことは、しっかり申し伝えまして、今後の改善に努めさせていただきますので
何を改善すんの?  

■ 後略

●考察のポイント

1.⇒お詫びの仕方が適切ではありません。応対者が天満太郎さんではなく、もしも皆さまなら、通話冒頭からどのようなお詫びをするでしょうか。
2.⇒お客さまの状況や心情を「理解すること」「理解したことを伝えること」において、天満太郎さん応対の中で不足している点は何でしょうか。
3.⇒「信頼できる応対者」という印象を、天満太郎さんはもたらせているでしょうか。理由も含めて考えてみましょう。
4.⇒お客様には「たとえ店舗スタッフには無理でも、本社のコールセンターなら私の話しをしっかり聞いてくれるだろう」という事前期待があります。その期待にかなう(或いは上回る)会話をもってお客様に応えることができているでしょうか。理由も含めて考えてみましょう。

 

次回(第2回)は、上記の考察にそって、分析を深めていきます。

ぜひお時間のある時に、このケーススタディに取り組んでみてください。末筆ですが、大雨による被害が拡大中です。被災地の皆さまに心からお見舞い申し上げます。どうぞ引き続き厳重な警戒を行なってくださいますようお願いいたします。

2.講師プロフィール

竹内 豊 講師

「企業の最たる財産は“人”」「人財の成長が企業と地域社会、日本と世界を変える」をテーマに人財育成に従事。

営業、販売、サービス・接遇、クレーム応対などを広範囲に含む「顧客応対品質」の向上、お客さまと企業とがあたたかな心の繋がりを築くホスピタリティ、人は何の目的をもって労働に従事し組織に貢献するかという自己啓発分野を、自らの業務経験上から深掘りした研修は、受講者からの定評が高い。笑いあり、白熱あり、涙ありとインパクトのある内容で、受講者の習得効果を追求。受講したその日から実践できるスキルだけでなく、成長の持続性と長期性を重視し、「意識面」「知識面」「技術面」からの多角的アプローチを大切にしている。