2023.07.19
早期離職を防ぐ9つの対策方法!若手の離職を防ぐためにできること

若手社員の早期離職は、日本企業にとって長年の課題となっています。離職を考える理由の多くは、企業に対する不満です。早期離職がおこる理由を理解し、対策を講じることにより、離職防止につなげられます。本記事では、早期離職がおこる理由や企業にもたらす影響、早期離職を防ぐための対策を解説します。
若手社員の早期離職は、日本企業にとって長年の課題となっています。離職を考える理由の多くは、企業に対する不満です。早期離職がおこる理由を理解し、対策を講じることにより、離職防止につなげられます。本記事では、早期離職がおこる理由や企業にもたらす影響、早期離職を防ぐための対策を解説します。
1.若手の早期離職率は約30%

日本では、直近20年以上にわたり新規学卒者の早期離職率が約30%となっています。早期離職は、従業員が企業に就職してから3年以内に離職することです。
厚生労働省の調査によると、直近20年の大卒社員の早期離職率は、2004年の36.6%が最高となっており、2022年は31.5%でした。2022年の大卒社員の早期離職率を業種別でみると、宿泊業・飲食サービス業が60.6%ともっとも高くなっています。
近年では若手の早期離職が問題視されています。しかし、前述したように直近20年の離職率自体に変動はありません。これは、就労人口減少による採用人数の増加や人材育成コストの増加により、若手社員が離職した際のインパクトをより大きく感じるようになっているためと考えられます。
2.若手の早期離職がおこる5つの理由

若手の早期離職がおこる主な理由として、以下の5つが挙げられます。
●仕事に対するやりがいの欠如
●労働環境、待遇への不満
●職場の人間関係への違和感
●人手不足企業の増加
●キャリア形成への意識変化
ここでは、若手の早期離職がおこるそれぞれの理由について解説します。
1.仕事に対するやりがいの欠如
若手の早期離職がおこる理由として挙げられるのは、仕事に対するやりがいの欠如です。エン・ジャパン株式会社による「退職のきっかけ」の調査でも第1位でした。
入社前のイメージと、実際の職場環境や仕事内容のイメージにギャップがあるほど、働きがいや仕事のやりがいを見失いやすいと考えられます。例えば、入社前には成果主義の評価基準と聞いていたのにもかかわらず、入社してみると年功序列の評価基準が残っていた場合が該当します。
成果主義と聞いていたため、高いモチベーションで業務に取り組んでいたものの、なかなか評価されずに、仕事に対するやりがいを失っていくのです。これは、企業の採用ブランディングが過度であることや、正しい情報を伝えられていないことが原因です。
2.労働環境、待遇への不満
労働環境や待遇への不満も、若手の早期離職がおこる理由に挙げられます。多くの日本企業では、終身雇用を前提とした年功序列の賃金制度を採用してきました。そのため、若年層の賃金は低く、熟年層ほど賃金が高い傾向にあります。残業や休日出勤で拘束時間が長いにもかかわらず、給料が低い場合は、特に不満を感じやすいでしょう。
また、終身雇用が崩れはじめた現在では、年功序列の賃金制度に納得できない人が増えてきました。特に、若年層はワークライフバランスを重視する傾向も高くなっています。近年は、他企業の労働条件や転職成功者の情報を入手しやすいため、より良い労働条件を求めて、早期離職を考えるケースもでてきています。
賃金制度に対する違和感に気付きやすくなったことが、離職率の高さにつながっていると考えられるでしょう。
3.職場の人間関係への違和感
職場の人間関係への違和感も、若手の早期離職がおこる理由に挙げられます。会社員は、起きている時間の大半を職場の同僚と過ごします。そのため、職場での人間関係に問題があった場合は、その場から離れたいという思いから離職を考えるのです。
職場の人間関係での問題として挙げられるのは、パワー・ハラスメントやセクシュアル・ハラスメントといったハラスメントです。ハラスメントによる上司や同僚との関係不和はモチベーションやエンゲージメントに悪影響を与えます。人によって態度が変わる上司や高圧的な言葉遣いをする上司・同僚は、若手社員にとってはストレスとなります。
また、若手社員が孤立してしまうような職場も、早期離職につながりかねません。若手社員や新入社員は、仕事の進め方や将来のキャリアに不安を持っています。しかし、上司や同僚が相談にのってくれなかったり、コミュニケーションが少なかったりする職場の場合、不安を解消できません。
不安な気持ちが続いた結果、職場を離れることを考えるのです。
4.人手不足企業の増加
人手不足企業の増加も若手の早期離職がおこる理由のひとつです。人手不足とは、業務の遂行に必要な人材が不足し、支障がでている状態を指します。株式会社帝国データバンクの調査によると、人手不足と感じている企業の割合は50%を超える結果となりました。なかでも、「旅館・ホテル」は、約80%の企業が人手不足と感じていることが明らかになりました。
人手不足により採用市場は売り手市場となっているため、希望する職種に転職しやすくなっています。転職のしやすさが、早期離職の後押しになっていると考えられます。
5.キャリア形成への意識変化
キャリア形成への意識変化も、若手の早期離職がおこる理由のひとつです。現代の若手社員は、企業に依存しないキャリア形成に対する意識が高まっています。株式会社ビズリーチの調査によると、70%以上の大学生が「企業に依存しないキャリア形成を意識している」と回答しました。さらに、半数以上が将来のキャリアのために転職を視野に入れていると回答しています。
この結果からも、若手社員のキャリア意識が従来の企業依存型ではなく、企業と対等な関係を求める「自律型」へと変化していることがわかります。キャリアに関する考え方の変化が、早期離職につながっているのです。
3.若手社員の早期離職が企業へもたらす影響

若手社員の早期離職は、企業に以下のような影響をもたらします。
●採用・教育コストの損失
●人材不足による利益損失
●企業のイメージダウン
●次世代リーダーが育たないことによる後継者難
これらの影響を防ぐためにも、前述した早期離職の理由をふまえたうえで、対策を施す必要があります。ここでは、若手社員の早期離職が企業へもたらすそれぞれの影響について解説します。
採用・教育コストの損失
若手社員の早期離職が企業へもたらす影響として、採用や教育コストの損失が挙げられます。社員を採用するには、求人広告費や採用活動の人件費など多大なコストが必要です。
売り手市場となっている近年では、多様な採用方法を併用しているケースもあり、人材採用コストは上昇傾向です。若手社員が早期退職した場合、採用にかかったコストと採用担当者の工数が損失となります。その補填をするためのコストも必要です。
また、社員を一人前に育てるには、研修費や教育担当者の工数だけではなく、社員が会社に貢献できるレベルに育つまでの人件費もかかります。これらの費用や工数が無駄になることは、企業にとって大きな損失といえるでしょう。
人材不足による利益損失
人材不足による利益損失も、若手社員の早期離職が企業へもたらす影響のひとつです。社員が離職した場合、早急に代わりとなる人材を確保する必要があります。
しかし、近年は売り手市場となっているため、新たな人材をすぐに確保できるとは限りません。新たな人材を確保できなければ、現場の負担はさらに大きくなります。現場に負担がかかれば、生産性も上がらず、利益も創出できません。
若手社員の早期離職は、組織全体の利益の損失につながる可能性があります。
企業のイメージダウン
若手社員の早期離職は、企業のイメージダウンにもつながる可能性があります。情報化社会となっている近年では、知りたい情報があれば、インターネットを使ってすぐに調べられます。
特に、SNSやクチコミサイトは、ネガティブな情報が拡散されやすいプラットフォームです。早期離職率が高い場合、その情報は求職者にも伝わります。求職者からは、早期離職者が多い会社としてネガティブなイメージを持たれるでしょう。
若手社員の早期離職は、求職者の志望度低下につながる可能性があります。
次世代リーダーが育たないことによる後継者難
若手社員の早期離職は、後継者難にもつながります。次期経営者候補や管理職候補といった会社の未来を担う次世代リーダーを育てるには、時間が必要です。そのため、社員の経験が浅いうちから、研修や、さまざまな経験を積ませながら後継者を育てる必要があります。
しかし、優秀な人材が早期退職した場合、次世代リーダーの育成が止まってしまいます。次世代リーダーの育成が進まなければ、将来的に後継者難に陥る可能性もあるでしょう。後継者が見つからなければ、将来の経営に対する不安も生じます。
若手社員の早期離職は、将来の経営にも影響します。
4.若手の早期離職を防ぐための9つの対策

前述したように、若手の早期離職には、さまざまな理由があります。しかし、事前に対策を講じることにより、社員のモチベーションを向上させることができれば、早期離職の防止が可能です。ここでは、若手の早期離職を防ぐための対策について解説します。
1.研修制度を整え学びの場を積極的に設ける
若手の早期離職を防ぐ対策として挙げられるのは、研修制度を整え学びの場を積極的に設けることです。スキルアップに対する不満を解消し、人材を定着させるためには、研修やワークショップといった学びの機会を設けることが大切です。
ただし、学びの場を設ける際は、各社員に適した研修を実施する必要があります。各階級にあった研修を実施するほか、各社員に必要と思われるスキルが身に付く内容を検討しましょう。部門を横断するプロジェクトや、難易度が高い業務に挑戦する機会を与えることも有効です。
研修の効率化を図りたいときには、外部サービスの利用も検討しましょう。
2.定期的に面談を行う
2つ目の対策として挙げられるのは、定期的に面談を行うことです。面談の方法には、上司と部下での1on1ミーティングの実施のほか、メンター制度を設け、社歴が近い先輩に相談できる環境を整えるのも有効です。
定期的な面談により、社員が抱える悩みが大きくなる前に対策を講じられます。社員が悩みごとを相談できる環境を整えることが大切です。自社にあった面談や相談の仕組みを取り入れましょう。
3.採用時の情報発信で入社後のミスマッチを防ぐ
3つ目の対策は、採用時の情報発信により、入社後のミスマッチを防ぐことです。採用時に、仕事の楽しい部分や会社の良い側面だけをアピールしていた場合、入社後に業務の難しさに直面し、ギャップを感じるケースがあります。
良い側面だけをアピールするのではなく、厳しさや経営課題も包み隠さずに伝えることにより、入社後のミスマッチを防止できます。入社前に、職場見学や先輩社員とコミュニケーションをとれる機会を設け、職場環境や企業風土を理解してもらうことが大切です。
4.労働条件や待遇を見直す
4つ目の対策は、労働条件や待遇を見直すことです。早期離職の理由に労働条件や待遇の悪さが挙げられているように、近年の若手社員は、ワークライフバランスを重視する傾向にあります。
若手の早期離職を防ぐには、柔軟な働き方を選べるような労働条件の提示をする必要があります。また、成果が人事評価や賞与に反映されるよう、制度を整えることも大切です。成果が正しく評価されなければ、社員のモチベーションが上がらず、退職を検討する可能性があります。
社員の取り組みを正当に評価する制度であれば、社員はモチベーション高く業務に取り組めるでしょう。
5.若手との積極的なコミュニケーションを図る
5つ目の対策は、若手との積極的なコミュニケーションを図ることです。若手社員の中には先輩や上司に相談できず、不安を抱え込んだ結果、退職してしまうケースがあります。社員が自分の意見を言いやすい雰囲気を作ることにより、離職防止につながります。
特に、近年はリモートワークの浸透により、相談したくても気軽に相談できない状況が増えてきました。上司や先輩から積極的にコミュニケーションをとり、若手をサポートするよう心がけることが大切です。前述したように、1on1ミーティングの実施やメンター制度の導入を検討しましょう。
6.企業の経営方針や課題を共有する
6つ目の対策は、企業の経営方針や課題を共有することです。仕事を覚えはじめると、社員本人の中で、自分の方向性について悩みはじめることがあります。その際、組織内での自分の存在意義や立場が曖昧になっている場合、自社に残る必要性を感じられず、退職を考えるケースがあります。
そのような社員に必要なのは、組織における立場や期待している役割を伝えることです。企業の経営方針や課題を共有し、立場や期待している役割を伝えることにより、社員が自分の存在意義を理解でき、帰属意識が高まります。
また、期待していることだけではなく、これまでの取り組みを称賛することも大切です。成果とともに、過程も正しく評価すれば、モチベーション向上につながるでしょう。
7.フィードバックで目標と課題を明確化する
7つ目の対策は、フィードバックで目標と課題を明確化することです。目の前の業務に追われている場合、視野が狭くなり、自分や周りに対するネガティブな面が目についてしまいます。
特に優秀な人材の場合、仕事がその社員に集中することにより疲弊した結果、退職してしまうケースもあります。そのような状況を防ぐ方法には、定期的に仕事に対する評価をフィードバックすることが有効です。
フィードバックにより、今の状況を客観的に理解するとともに、新たな目標や課題を明確にできれば、前向きに取り組めるようになるでしょう。
8.上司のマネジメントスキルを伸ばす
8つ目の対策は、上司のマネジメントスキルを伸ばすことです。若手社員にとって、上司の言葉遣いや指導方法は、ストレスとなる可能性があります。特に、上司は自分が若手時代に言われた言葉や成功体験をもとに、若手社員に接する傾向があります。
しかし、社員の中には上司がこれまで言われてきた言葉を言われても、上司と同じようには受けとらない人もいるでしょう。適切な接し方は、社員の価値観や特性によって異なります。
上司が部下の価値観や特性にあわせて適した指導ができるようになれば、若手社員の不満軽減につながります。そのためには、上司に対し「コーチング研修」や「フィードバック研修」を実施し、上司のマネジメントスキルを向上させることが大切です。
部下に寄り添った指導ができ、若手社員のストレスを軽減できれば、離職防止につながるでしょう。
9.キャリアデザインをサポートする
9つ目の対策は、キャリアデザインをサポートすることです。自社でのキャリアパスが見えにくい場合、自社に残る意義を見出せず、早期離職の原因になる可能性があります。
このようなケースを防止するには、社員に対し、自社でどのようなキャリアを築けるのかを提示する必要があります。ロールモデルとなるような、成果を上げている先輩社員が身近にいれば、キャリアに対するビジョンを描きやすくなるでしょう。
キャリアデザイン研修を実施し、社員に今後のキャリアプランを立てさせることも有効です。達成できそうな目標を設定させるといった工夫をし、必要に応じて研修などでスキルを付与すれば、社員のキャリアが明確になり、モチベーション向上につながります。
5.企業研修プログラム
TRAINING BY HIERARCHY
階層別研修
TRAINING BY HIERARCHY
階層別研修
新入社員~経営層まで各階層の役割・ミッションに応じた知識・スキルを学べる研修カリキュラムです。
THEME
テーマ別研修
THEME
テーマ別研修
学習したいテーマに特化して知識・スキルを学べる研修プログラムです。
6.まとめ
日本では、直近20年での新規学卒者の早期離職率が約30%となっています。若手の早期離職がおこる主な理由として、以下の5つが挙げられます。
●仕事に対するやりがいの欠如
●労働環境、待遇への不満
●職場の人間関係への違和感
●人手不足企業の増加
●キャリア形成への意識変化
若手社員の早期離職は、採用・教育コストの損失や人材不足による利益損失、企業のイメージダウン、次世代リーダーが育たないことによる後継者難といった影響を企業にもたらします。しかし、事前に対策を講じることにより、社員のモチベーションを向上させ、早期離職を防止することが可能です。
自社の状況や、社員の価値観を理解し、適した方法を講じることにより、若手社員の早期離職の防止につなげましょう。
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