HOME 人材育成コラム パープル企業とは?ホワイトでもブラックでもない企業が抱えるリスクと対策

パープル企業とは?ホワイトでもブラックでもない企業が抱えるリスクと対策

最近よく耳にするようになった「パープル企業」という言葉。
なんだか働きやすそうな響きですが、実はそうでもありません。長時間労働やハラスメントがある“ブラック企業”とは違うものの、仕事のやりがいや成長のチャンスが少ない企業を指しており、「ゆるブラック企業」と呼ばれることもあります。
ホワイト企業とブラック企業のちょうど中間にある存在で、一見ラクに働けるように見えても、長い目で見ると社員にも企業にもリスクをもたらす可能性があります。
この記事では、そんなパープル企業の特徴やメリット・デメリット、そして“パープル化”を防ぐための対策をわかりやすく解説します。

1.パープル企業とは?

パープル企業とは

「パープル企業」とは、ブラック企業とホワイト企業の間に位置する企業のことで、「ゆるブラック企業」とも呼ばれています。パープル企業の最大の特徴は、労働環境が比較的良好であることです。長時間労働やノルマなどの厳しい縛りがなく、パワハラや法令違反も見られません。定時内に業務を終えることができ、社内の雰囲気も良好で、離職率も低い傾向にあります。

 

しかし、ホワイト企業と違って「やりがい」のある仕事が少なく、ルーティンワークが中心となり、従業員の成長機会が限られているという側面も持ち合わせています。そのため、辞める理由がなく、かといって成長の機会や収入増加は期待しにくいという特徴があります。

パープル企業が増加した背景には、働き方改革の影響で残業が減少し、パワハラ対策が進んだことがあります。また、若手社員の離職やハラスメントを防ぐために、管理層が積極的に社員の指導をしないケースも増えてきているようです。

ブラック企業・グレー企業・ホワイト企業との違い

他の企業タイプと比較すると、その位置づけがより明確になります。

  1. ブラック企業:過酷な労働環境やパワハラがまん延している企業
  2. グレー企業:ブラック企業よりはましだがホワイト企業ほど労働環境は良くない企業。法令順守ギリギリを行く努力をしている企業が多い
  3. ホワイト企業:従業員への待遇や福利厚生が充実していて、離職率も低く、働きやすい環境が整備されている企業
  4. パープル企業:労働環境は良好だが、成長機会が限られ、やりがいを感じにくい企業

パープル企業とグレー企業の違いは、法令順守の厳しさにあります。パープル企業は法令を順守していますが、グレー企業は法令順守ギリギリのラインで運営されている傾向があります。

2.従業員から見たパープル企業

パープル企業とは

パープル企業で働く従業員にとって、メリットとデメリットの両面があります。自分のキャリアプランや価値観に合った企業を選ぶために、これらを理解しておくことが重要です。

メリット

ワークライフバランスが取りやすい

パープル企業の最大のメリットは、ワークライフバランスが取りやすい点です。残業が少なく、定時退社が当たり前の文化が根付いているため、プライベートの時間を確保しやすくなっています。休暇も取りやすく、家庭との両立がしやすい環境が整っているケースが多いでしょう。

過度なプレッシャーが少ない

ノルマや数値目標が厳しく設定されておらず、業績プレッシャーが少ないのもパープル企業の特徴です。社員間の競争も穏やかで、心理的負担が少ない環境で働くことができます。こうした環境は、ストレスを感じにくく、心身の健康を維持しやすいでしょう。

安定した職場環境

パープル企業では、社内の人間関係が良好で、ハラスメントなどの問題が起こりにくい環境が整っています。上司からの過度な干渉も少なく、自分のペースで業務に取り組めることが多いでしょう。また、離職率が低いため、長期的に安定した雇用が期待できます。

デメリット

成長機会が少ない

パープル企業最大のデメリットは、成長機会が限られていることです。チャレンジングな業務や新しいスキルを習得する機会が少なく、専門性を高めることが難しい環境です。また、上司からの指導や適切なフィードバックが少ないため、自己成長のためのサポートが不足しがちです。

給与や待遇が大きく向上しづらい

パープル企業では、業績評価が厳密に行われない傾向があり、成果に対する正当な評価を受けにくい環境です。そのため、給与や待遇の大幅な向上が期待しにくく、長期的には経済的不満が生じる可能性があります。キャリアアップの機会も限られているため、将来的な収入増加が見込みにくい点も問題です。

やりがいを感じにくい

業務内容がルーティンワーク中心で、創造性を発揮する機会が少ないため、仕事に対するやりがいを感じにくい環境です。また、会社の成長や発展に貢献している実感を得られないことも多く、長期的にはモチベーションの低下を招く恐れがあります。

パープル企業はどんな人に向いているのか?

安定した働き方を重視する人

パープル企業は、安定した雇用と穏やかな職場環境を求める人に向いています。長時間労働を避け、一定のペースで確実に業務をこなしたい人には理想的な環境かもしれません。特に、家庭の事情などで働く時間に制約がある人にとっては、メリットが大きいでしょう。

仕事よりプライベートを重視する人

仕事での成功よりも、プライベートの充実を優先したい人にとって、パープル企業は魅力的な選択肢です。定時退社が当たり前の文化があり、趣味や家族との時間を大切にしたい人に適しています。ワークライフバランスを重視する価値観を持つ人には、働きやすい環境といえるでしょう。

チャレンジよりルーチンワークが好きな人

新しいことへのチャレンジよりも、決まった業務を確実にこなすことを好む人には、パープル企業が向いています。予測可能な業務内容と安定した職場環境を求める人にとって、ストレスの少ない理想的な職場かもしれません。日々の変化よりも、安定感を重視する人に適した環境です。

3.パープル企業化した場合の企業側の影響は?

パープル企業とは

パープル企業は従業員にとっては働きやすい環境かもしれませんが、企業側にはどのような影響があるのでしょうか。長期的な視点で見ると、いくつかの重大なリスクが考えられます。

社員の成長が停滞し、企業全体の成長が鈍化

企業が社員に高い成果を求めない環境を作ると、社員は成長意欲を失いやすくなり、企業全体の生産性が低下する恐れがあります。社員が現状維持に満足し、自己研鑽や業務改善への意欲が低下すると、組織全体の競争力が弱まります。特に、急速に変化する現代のビジネス環境では、継続的な成長と適応が求められるため、社員の成長停滞は企業の発展に大きな障害となる可能性があります。

 

マネジメントがゆるく行われているため、チームで目標を達成する意識が薄れ、部門間の連携も弱くなりがちです。こうした状況が続くと、企業全体の生産性低下を招き、長期的な成長が鈍化してしまいます。

変化への対応力が低く、競争力が弱まる

市場環境が急速に変化する中で、社員の挑戦意識が低いと新しいビジネスチャンスを逃し、競争力が落ちるリスクがあります。パープル企業では、現状のプロセスや方法に固執する傾向があり、イノベーションや改革への抵抗が強くなりがちです。

 

「現状がベストな状態なのか」「もっとお客様のためにできる施策はないか」などを考える機会が少ないため、市場のニーズ変化に対応できず、競合他社に遅れを取る可能性があります。長く使われてきたノウハウも大切にしつつ、今の社会のニーズを導入する動きをしなければ企業としての存続も難しくなります。

優秀な人材が流出しやすくなる

成長意欲の高い社員はよりチャレンジできる環境を求めて転職するため、企業の競争力がさらに低下する可能性があります。特に、企画・アイデア出しや課題改善をすることに仕事の価値やモチベーションを持っている人材は、パープル企業の雰囲気に耐えられず、流出してしまう傾向にあります。

 

パープル企業では、社内・社外問わず研修の機会が少ない場合もあり、「この企業では、成長できない」と感じた社員が離職してしまうリスクがあります。採用コストがかさみ、優秀な人材が減少していくことで、さらなる競争力低下を招く恐れがあります。

イノベーションが生まれにくく、企業の将来性が不透明になる

挑戦を促さない企業文化では新しいアイデアが生まれにくく、長期的に見ると企業の成長が停滞する可能性があります。現状維持が当たり前の環境では、業務改善や新しいビジネスモデルの創出が難しくなり、市場の変化に対応できなくなるリスクがあります。

 

また、イノベーションが生まれにくい環境では、他社に先んじた取り組みや差別化が困難になり、競争力の低下を招きます。長期的には、企業の存続すら危うくなる可能性があるため、適切な対策が必要といえるでしょう。

4.パープル企業にならないための対策

パープル企業とは

パープル企業化を防ぎ、働きやすさと成長性を両立させるためには、どのような対策が効果的でしょうか。ここでは、具体的な施策について解説します。

マネジメント層の教育

現代のマネジメント層は「働き方改革の遵守」や「Z世代への対応」「ハラスメント防止」など、多くの難題を抱えながら部下と接しています。こうした課題に適切に対応するため、管理職への教育が不可欠です。

 

まず、ハラスメント研修などを通じて、どういったケースがハラスメントにあたるのか正しい知識を習得することが重要です。「強く言うと辞めるかもしれない」という懸念から適切な指導ができないと、他の社員のモチベーション低下にもつながります。

 

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また、一律で残業を禁止するのではなく、どういったケースで残業が認められるのかを会社として明確にすることも大切です。適切なマネジメントスキルを身につけた上司が、部下の成長を促しながらも働きやすい環境を維持することで、パープル企業化を防ぐことができます。

 

リーダーシップ研修やマネージャー研修を通して、より高い問題解決能力やコミュニケーションスキルを習得させることも効果的です。効果的な管理職・マネージャー層の育成は、企業全体の生産性と士気を向上することができ、結果として企業の競争力強化につながります。

 

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社員の成長を促す仕組みの構築

企業が持続的な成長を遂げるためには、社員の成長を促す仕組みの構築が重要です。まず、経営のビジョンを社内に浸透させ、期初に経営の事業未来図に紐づいた目標をしっかり設定することが大切です。上司と部下で定期的に進捗を振り返り、個人の「成長」を可視化して実感させることで、モチベーション向上につながります。

 

また、評価制度の見直しも重要です。年功序列的な制度ではなく、一人ひとりの貢献が正しく評価され、それが昇給などに分かりやすく反映される仕組みを整えましょう。不公平感を生まないよう、評価体系をしっかりと練り直すことがポイントです。

 

さらに、適度な負荷をかけたストレッチ目標の設定も効果的です。社員の能力を少し超えた、しかし達成可能な目標を設定することで、成長の機会を提供します。ただし、過度なストレスを与えないよう、個々の社員の能力や経験を考慮した目標設定が必要です。

 

キャリア面談の実施も有効な施策です。定期的に上司や人事部門と面談を行うことで、社員の希望や課題を把握し、適切なキャリアパスを提示することができます。現在の業務に対する満足度や将来のキャリアビジョンについて話し合い、必要なスキルアップの機会を提供しましょう。

多様な働き方の導入

多様な働き方の導入は、従業員の満足度と生産性の向上に直結します。テレワークやフレックスタイム制度などを導入することで、社員が自身のライフスタイルに合わせた働き方を選択できるようになります。

働き方の幅が広がれば、仕事とプライベートのバランスが取りやすくなり、社員の仕事へのモチベーションも上がるでしょう。これにより、企業全体の生産性向上が期待できます。多様な働き方を認めることで、社員の自律性と責任感も育まれ、結果的に成長を促進する効果も期待できます。

福利厚生の充実

従業員が満足していると離職率が低くなり、採用や育成の手間が減ることで企業の生産性も向上します。特に育成と福利厚生の改善については重点的に検討すべきでしょう。

 

具体的には、リフレッシュ休暇やウェルネスデー(健康増進日)の設定、誕生日や記念日に対する休暇付与制度などが効果的です。休暇を付与することは一時的な対応に思えるかもしれませんが、「社員のプライベートも重要視している」という姿勢を示すことで、企業への信頼感を高める効果があります。

 

また、社内研修や外部セミナーへの参加支援も重要です。階層別研修や、今後のキャリアや強みを振り返るキャリアデザイン研修などを通じて、社員の成長をサポートしましょう。こうした取り組みは、従業員にとってキャリアパスの明確化を叶え、将来的な目標設定やスキルアップにつながります。

5.うちは大丈夫?パープル企業のリスクを回避する方法とは

パープル企業には、ワークライフバランスの良さや安定した職場環境といった魅力がある一方で、成長機会の不足やイノベーションの停滞といった課題も存在します。働きやすさだけを追求すると、長期的には企業の競争力低下や優秀な人材の流出というリスクにつながる可能性があります。

理想的な企業のあり方は、パープル企業の良い側面である働きやすさを維持しつつ、社員と企業の成長を両立させることです。そのためには、マネジメント層の教育や適切な評価制度の構築、多様な働き方の導入、福利厚生の充実などの施策が効果的です。

特に重要なのは、社員一人ひとりの価値観を理解し、それぞれが「やりがい」を感じられる環境を整えることでしょう。上司と部下が定期的に1対1で話し合う「1on1」などの機会を設け、部下の価値観を知り、どこにやりがいを感じるのかを把握することが大切です。

働きやすさと成長のバランスを取りながら、社員と企業がともに発展していく―それこそが、これからの企業に求められる重要な課題といえるでしょう。

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